PR

健康診断は、会社の義務!

毎年、会社から健康診断の案内が来ると、「バリウムを飲まされるが憂鬱」だったり、「忙しくて、面倒だなあ」と思っていた健康診断ですが、会社は従業員に健康診断を受けさせる義務があり、従業員は健康診断を受ける義務があります。
健康診断は自分の身体の状態を客観的に知ることができる絶好の機会です。
毎年健康診断を受けて、健康を維持して働けるように心がけていくことが大切です。

スポンサーリンク

健康診断は、労働安全衛生法で義務付け

健康診断は、労働安全衛生法で「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」と規定されています。
従業員が1人でもいる場合は、規模の大小に関係なく、個人事業や中小企業でも健康診断を受診させなければなりません。
社員に健康診断を受診させる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されます。
会社は、その「使用者責任」の一環として、従業員の健康や身体の安全を管理する義務があります。事故を起こしたり病気で働けなくなってしまった場合、安全配慮義務を守らなかったとして、会社は厳しく追及されることとなります。
反対に、労働者にとっては、事業者が行なう健康診断を受けなければならない義務が有ります。健康診断を拒否した場合、労災の時に不利になります。例えば過労で病気になった場合、会社に対して損害賠償請求をしても、過失相殺されます。会社側からすれば、社員に健康診断を受けさせる義務があるので、それを怠って病気になれば損害賠償責任が生じます。

スポンサーリンク

健康診断の種類

健康診断は主に、「定期健康診断」、「生活習慣病予防検診」、「特定健康審査(通称メタボ:健診)の3つがあります。

定期健康診断

労働安全衛生法の中で、事業主が社員に対して通常1年に1回の受診を義務付けられているもので、フルタイムの正社員であれば、年齢に関わらず受診させる必要があります。企業が実施する健康診断には、「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。一般健康診断は、さらに「雇入れ時健康診断」(労働安全衛星規則第43条)と「年1回の定期健康診断」(労働安全衛星規則第44条)とがあります。
注意:ほかに、特定業務従事者健康診断や、海外派遣労働者健康診断がありますが、ここでは省略します。

生活習慣病予防検診

生活習慣病予防検診は、「協会けんぽ」が病気を予防するための保険事業の一環として、対象者を年齢によって限定し(35歳以上)、「協会けんぽ」が費用を補助することで、充実した健診を実施するものです。よって、事業主の義務である定期健康診断とは別物なので、受けたい人が受けるということになります。
但し、生活習慣病予防健診のコースの中で、「一般健診」を受診した人については、定期健康診断に代用することが可能です。(「一般健診」が定期健康診断の検査項目を含んでいる為)
しかし、「がん検診」等を単独で受けた場合は、定期健康診断の検査項目とは異なる為、別途、あらためて定期健康診断を受ける必要があります。また、生活習慣病予防検診の対象者は35歳以上の為、35歳未満の社員については、別途、定期健康診断を実施する義務があります。

特定健康診査(メタボ健診)

協会けんぽが、メタボリック症候群に着目して、40歳から74歳の全ての人を対象にして、実施される健康診査です。
メタボ健診は、義務付けの主体が会社でなく、保険者(協会けんぽ)となっていますので、会社や社員に受診させる義務、受診する義務はありませんので、うけなくともペナルティがあるわけではありません。
尚、生活習慣病予防健診の「一般健診」はメタボ健診を兼ねていますので、生活習慣病予防健診を受診する社員は自動的にメタボ健診を受けていることとなります。また、メタボ健診はメタボに特化した健診の為、定期健康診断の検査項目を満たしていませんので、別途、定期健康診断を実施する必要があります。

健康診断の実施

健康診断の実施時期

雇入れ時(雇入れ時健康診断)

常時使用する労働者を雇入れる直前又は直後に健康診断を実施します。
注意:例外として、入社前3ヶ月以内に実施した健康診断書の提出を求めることで、対応することもできます。
雇入れ時からさかのぼって3カ月以内に、その労働者が上記の項目について 健康診断を受けていれば、その結果を書面で提出してもらうことで雇入れ時の健康診断に代えることができます。

1年以内に1回(定期健康診断

毎年、1年以内ごとに1回実施します。

配置替え及び6ヶ月以内に1回(特定業務事業者の健康診断)

一定の有害業務に常時従事する従業員に対して、その配置換え及び6ヶ月以内ごとに1回、定期健康診断の検査項目の実施義務があります。
尚、注意すべきは、深夜業を含む業務従業者です。実は、深夜業務は、この特定業務とされています。
この場合の深夜業とは、午後10時から翌朝5時迄の間に働くことをいいます。勤務時間の一部がこの時間帯にかかる場合は深夜業務となりますので、交代制の勤務や残業なども含まれます。常時使用される労働者であって、当該健康診断を受けた日前6ヶ月間を平均して1ヶ月に4回以上で6ヶ月間で24回以上の深夜業に従事した人です。この業務に従事しているすべての従業員について6ヶ月に1回(年に2回)の健康診断の受診が義務付けられています。

健康診断の対象者

雇用期間の定めがない者(常時使用する労働者)

雇用期間の定めはあるが契約期間が1年(特定業務従事者は6ヶ月)以上の者

契約の更新により1年以上使用される予定の者、契約の更新により1年以上引き続き使用されている者を含む。

1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること

1週間の所定労働時間が、その事業所の同種業務に従事する従業員の4分の3以上であれば、「常時使用する労働者」に該当します。
つまり、1週40時間の場合、30時間以上の所定労働時間となります。

健康診断の検査項目

一般健康診断の項目例は、以下の通りです。
入社時の健康診断で受けなければならない項目は以下の11項目です。この項目は全て受けなければなりませんが、会社によってはこの項目に追加して内容を充実させている会社もあります。その場合は、基本的な検診については会社負担でオプションについては自己負担としているところが多いようです。
尚、雇用時健康診断の項目は省略ができませんので、注意が必要です。
<定期健康診断項目>
・既往歴及び業務歴の有無
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重、胸囲、視力及び聴力の検査
・胸部エックス線検査
・血圧の測定
・貧血検査
・肝機能検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・尿検査
・心電図検査

健康診断の実施時期・場所

一般的には、定期健康診断に生活習慣病予防健診を代用する場合、協会けんぽからお知らせが届いて、申請書などを送って指定の医療機関・日時に社員が受診しに行くという流れとなります。労働者が、事業者の指定した医療機関以外で健康診断を受診して、その結果の書面を事業者に提出しても構いません。(その場合は、事業者に費用負担義務はありません。)

健康診断の費用負担

行政通達によれば、「健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施を課している以上、当然会社が負担すべきものである。」と解釈されています。
ここでいう費用には、労働者が健診の医療機関へ移動する交通費も含まれると考えられています。

定期健康診断は、通常の業務とは関係なく受けるものですから、その間は労働していないと考えられます。よって、その間の賃金は払わない或いは有休扱いとすることは違法ではありません。健康診断の受診でかかる時間について賃金を支払うべきか、否かについては、それぞれの会社が労使の話し合い決めるものです。が、就業時間内で受診してもらうなどの措置が望ましいとされています。

健康診断の保管義務

事業者は、健康診断の結果を「健康診断個人票」を作成して、5年間保管しなればならない。通常は、医療機関に健康診断の申込みをする際に、労働安全衛生法で定められている「企業健診」であることを伝えれば、本人とは別に会社にも健康診断の結果が送付されます。
健康診断の結果は会社に見せなければなりません。健康診断結果が会社宛に来る場合は、病院側が「事業所保管用」と「本人控え用」の2通を同封してきます。
従業員個人に健康診断結果が通知された場合でも、従業員はその結果を会社に提出する義務 があります。
この健康診断の結果の会社への通知は、労働安全衛生法に「しなければならない」という形で定められています。会社側も保管期間が決まっていて従業員の健康診断記録を保管しておかなければなりません。健康診断を受けさせることが義務であることから考えても当然といえるでしょう。
尚、会社が保管すべき検査結果は、法定健診の内容のみの為、それ以外の検査結果(例えばバリウムなど)を会社に報告し、会社が保管する義務はありません。よって、コピーの提出が必要な場合、法定健診項目以外の検査結果を黒塗りにして提出しても構いません。また、バリウムや胃カメラは、法定健診項目ではない為、検査を受けなくても良いことになります。

<受診結果の報告義務>
常時50名以上の従業員を使用する事業者は、定期健康診断結果を所轄の労基へ提出しなければならない。