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派遣社員雇用の流れとその管理

派遣スタッフは、正社員や契約社員とは違い、雇用契約は人材派遣会社(派遣元)と結ばれており、給与も人材派遣会社(派遣元)から支払われています。つまり、派遣先企業は、仕事についての指揮命令を出すという立場になります。指揮命令権があるということは、”外注”とは異なり、適切に業務を管理しなければなりません。派遣スタッフを使う際の事務処理や遵守すべき法律などについてまとめてみました。

契約の締結と保管

派遣先管理台帳は、労働者派遣法により派遣先の義務として規定されています。
(労働者派遣法第42条第1項)

派遣先管理台帳の追加・更新、保管

派遣先管理台帳は、派遣事業所ごとに専属の派遣先責任者を選任の上、派遣先台帳の作成、記録及び保存等に関する責任があります。
(労働者派遣法第41条、施行規則第34条第1項)

業務報告(就業実績)の派遣元への報告

派遣先は派遣元に対して1ヶ月ごとに1回以上、一定の期日を定めて、就業実績等を通知しなければなりません。
(労働者派遣法第42条第3項、施行規則第38条)

抵触日の派遣元への通知

同じ派遣先への派遣は、3年が上限です。3年を超えて契約を結ぶ場合、派遣先の労働組合等過半数に意見を仰いだ上で、延長する契約を締結する1ヶ月以上前に派遣元へ通知しなければなりません。

派遣先管理台帳の使い方については、以下を参照下さい。

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派遣管理の流れ

解説動画は、こちら→ 「派遣先管理台帳の使い方」

テンプレートは、こちら→ 派遣先管理台帳V2.0

派遣会社の確認

派遣会社の許可番号(届出受理番号)を確認します。許可・届出派遣会社以外から派遣労働者を受け入れることはできません。
派遣会社の許可番号(届出受理番号)については、厚生労働所省の運営する「人材サービス総合サイト」で確認することができます。
例:派13-30XXXX、派27-30XXXX等

抵触日の通知

派遣先は、派遣契約を締結する前に、派遣元に抵触日(事業所単位)を通知する必要があります。(派遣法第26条第5項、第6項)

  • 派遣先は、労働者派遣契約の締結にあたり予め、派遣元事業主に対し、労働者派遣の受入れ開始の日以後、派遣受入期間の制限に抵触する最初の日(抵触日)を通知しなければなりません。
  • 派遣先から抵触日の通知がない場合は、派遣元事業主は新たに労働者派遣契約を締結してはなりません。抵触日通知を受けた後、派遣受入れ可能期間内で、はじめて派遣契約を締結することができます。

留意:
実務では、派遣元より抵触日通知書も雇用契約日より3年の日を抵触日として送付されます。が、間違っていれば、訂正を要請することが必要です。

抵触日通知書

派遣契約の締結

派遣会社との間で、適切に「労働者派遣契約」を締結します。派遣契約に記載すべき内容は、法律で定められています。
注意:
労働者派遣法によって派遣スタッフを特定する行為が禁じられているため、事前に派遣先が派遣労働者を指名することはもちろん、事前面接や履歴書を送付させることなどは原則禁止されています。(紹介予定派遣を除く)

  • 労働者派遣基本契約書
    法人間の取り引き上の基本事項(機密保持・支払条件など)、派遣法での定めなし
  • 労働者派遣個別契約書
    個別の派遣契約内容(期間・業務内容・人数など)、派遣法での定めなし

派遣契約の当事者は、契約の締結に際し派遣法第26条に基づき、個別の派遣就業条件などに関する事項を、都度、具体的に定めなければならず、その契約の内容を書面に記載しておかなければなりません。
ここでいう労働者派遣契約とは、恒常的に取引先との間に労働者派遣をする旨の基本契約ではなく、具体的に個別に就業条件をその内容に含む個別契約を言います。(厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)

派遣社員の受け入れ

派遣先への通知

派遣元から、派遣スタッフの氏名、雇用保険・社会保険の加入状況、性別、60歳以上か否かの別、無期雇用労働者か否かが通知されます。
留意:
労働者派遣法(法第35条、施行規則第27条の2)では、派遣労働者の健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入事実を派遣先が確認できるよう、被保険者資格取得届の提出の有無についての通知を派遣元事業主に義務付けています。また、資格取得届の提出「有」の場合には、被保険者証の写し等の資料を派遣先に提示又は送付することを業務取扱要領において義務付けています。派遣労働者本人による提示は認められておらず、派遣元の担当者が都度対応しなければなりません。

派遣先への通知書兼派遣先管理台帳

派遣労働者の社会保険加入状況の確認

派遣労働者が雇用保険、厚生年金、健康保険に未加入の場合は、「保険加入状況の通知」欄に、加入しない理由が記載されていますので、適切な理由であることを確認します。未加入の理由が適正でないと考えられる場合は、派遣元に対して、社会保険に加入させてから派遣する様に要請します。派遣労働者の社会保険加入状況は、個別契約書や、派遣元より送付される゛派遣先管理台帳゛へ記載されています。

雇用保険未加入の理由

雇用保険が適用されない理由は、次のどちらか
①週の所定労働時間が20時間未満の為
②雇用契約が31日以上継続する見込がない為

社会保険未加入の理由

社会保険が適用されない理由は、次のいづれか
①週の所定労働時間が通常の労働者の3/4未満の為
②労働契約が2ヶ月未満の為
③短時間労働者で以下のいづれかに該当する為
・週の所定労働時間が20時間未満である。
・月額賃金88,000円未満である。
・1年以上の雇用見込がない。
・学生である。

派遣先責任者の選任

派遣労働者数100人以下の場合は、1人で良く、他の職務との兼任もできます。尚、派遣労働者と、直接雇用の労働者が合わせて5人以下の場合は、選任は必要ありません。また、派遣先責任者が指揮命令者を兼任する場合であっても、実務上または派遣法上も特に問題はありません。
[ 派遣先責任者の職務 ]

  1. 適用される労働関係法令や締結した労働者派遣契約の内容などにいて周知すること。
  2. 派遣受入期間の変更通知に関すること。
  3. 派遣先管理台帳の作成、記録及び保存等に関すること
  4. 派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に当たること。
  5. 安全衛生に関する事。
  6. 派遣元との連絡調整に関すること。

派遣先管理台帳の作成

派遣先管理台帳は、労働者派遣法により派遣先の義務として規定されています。

労働者派遣法第42条第1項

作成

事業所の派遣労働者の数と、雇用している労働者の合計が5人以下の場合は派遣先管理台帳の作成は必要ありません。(則第35条第3項)

  • 派遣元管理台帳と同様、事業所ごと派遣労働者ごとに作成します。
  • 書式や作成方法については、必要な項目の記載があれば任意で構いません。

保存

派遣先は、3年間保存しなければなりません。(法第42条第2項)起算日は、労働者派遣が終了する日になります。(施行規則第37条)

罰則

派遣先管理台帳を作成、保存、通知を行わなかった場合、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。(法第61条第3号)

派遣先管理台帳の記載事項

派遣先管理台帳には、次の事項を派遣労働者ごとに記載しなければなりません。(法第42条第1項、施行規則第36条)

労働者派遣法第42条第1項

  • 派遣労働者の氏名
  • 派遣元事業主の氏名又は名称
  • 派遣元事業主の事業所の名称
  • 派遣元事業主の事業所の所在地
  • 協定対象派遣労働者か否かの別
  • 無期雇用か有期雇用かの別
  • 派遣就業した日
  • 派遣就業した日毎の始業・終業及び休憩時間
  • 従事した業務の種類・内容
  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
  • 派遣労働者が就業した事業所の名称、所在地、派遣就業した場所、組織単位
  • 派遣元責任者
  • 派遣先責任者
  • 派遣労働者が60歳以上の者であるか否かの別
  • 雇用保険、厚生年金、健康保険の加入状況
  • 派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に関する事項
  • 教育訓練を行った日時・内容
  • 紹介予定派遣である場合は、紹介予定派遣に関する事項
  • 派遣受入期間の制限を受けない業務の場合、その旨

派遣元事業主への通知

派遣先は派遣先管理台帳に記載した事項を派遣元へ通知しなければなりません。(法第42条第3項)
通知する内容は、以下の通りです。

  • 派遣労働者の氏名
  • 派遣就業した日
  • 派遣就業した日ごとの始業時刻並びに終業時刻ならびに休憩時間
  • 従事した業務の種類・内容
  • 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事した事業所の名称及び所在地その他派遣就業をした場所

1か月1回以上で、一定の期日を定め、派遣労働者ごとに書面の交付等により行わなければならず、派遣元事業主が請求すれば、遅滞なく書面の交付またはFAX、電子メールの送信により通知しなければなりません。(法第42条第3項、則第38条)
注意:
派遣労働者から苦情の申し出を受けた場合には、その都度、苦情申し出を受けた年月日、苦情の内容、苦情の処理状況に関する事項を通知しなければなりません。

派遣元への通知
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労働者派遣の期間制限

改正前の、いわゆる「26業務」への労働者派遣には期間制限を設けない仕組みが見直され、施行日以後に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、全ての業務で次の2つの期間制限が適用されます。

派遣先事業所単位の期間制限

派遣先の同一の事業所に対し、派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則、3年が限度となります。派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を聴く必要があります。

派遣労働者個人単位の期間制限

同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。
注意:
組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することができますが、事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されていることが前提となります。

クーリング期間

事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限の両方に所謂「クーリング期間」の考え方が設けられます。

事業所単位の期間制限

派遣先の事業所ごとの業務について、労働者派遣の終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えない時は、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

個人単位の期間制限

派遣先の事業所における同一の組織単位ごとの業務について、労働者派遣の終了後に同一の派遣労働者を再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3か月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものと見做されます。

期間制限の例外

次に掲げる場合は、例外として、期間制限がかかりません。

  • 派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
  • 60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  • 終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
  • 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

過半数労働組合等への意見聴取手続

派遣先は、事業所単位の期間制限による3年の派遣可能期間を延長しようとする場合、その事業所の過半数労働組合等(過半数労働組合または過半数代表者)からの意見を聴く必要があります。

意見聴取の流れ

(出典:「平成27年労働者派遣法改正法の概要」パンフレットより)

書面通知

派遣先は、事業所単位の期間制限の抵触日の1か月前までに、事業所の過半数 労働組合等からの意見を聴きます。但し、十分な考慮期間を設けなければなりません。派遣先が意見を聴く際は、次の事項を書面で通知しなければなりません。

  • 派遣可能期間を延長しようとする事業所
  • 延長しようとする期間

書面の保存・周知

派遣先は、意見を聴いた後、次の事項を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存し、また事業所の労働者に周知しなければなりません。

  • 意見を聴いた過半数労働組合の名称または過半数代表者の氏名
  • 過半数労働組合等に書面通知した日及び通知した事項
  • 意見を聴いた日及び意見の内容
  • 意見を聴いて、延長する期間を変更したときは、その変更した期間

派遣可能期間の延長

派遣可能期間を延長できるのは3年間までです。延長した派遣可能期間を再延長しようとする場合は、改めて過半数労働組合等から意見を聴く必要があります。

必要な書類

労働者代表選任届

労働者の過半数の代表者は、「こうやって決めました」というエビデンスです。

意見聴取に係る通知書
抵触日通知書

派遣契約を延長する派遣元への通知書です。