働き方改革法案によって労働基準法が改正されました。2019年4月より施行され、これにより年10日以上の有給休暇が付与される従業員については、最低5日以上の有給休暇を取得することが義務付けられました。そこで求められる「有給休暇管理表(Excel)」を作成し運用しましたので、公開します。その運用方法と、Excelで使用した関数も公開していますので、参考になればと思います。
尚、「シートの追加」及び「シート名の自動入力」の箇所はVBAマクロで作成しておりますが、ここの説明は省略しています。
[ 更新履歴 ]
2022.02.16 有給休暇管理表V3.0を公開した。
有給消化日を入力するだけで、消化日数を自動更新します。
V3.0は、こちら↓
2021.02.16 有給休暇管理表V2.0を公開した。
当該有給休暇管理表に、時季(労働者が実際に有給休暇を取得した日付)を記入する欄を追加して、有給休暇管理表V2.0として公開した。
V2.0は、こちら↓
2019.10.03「これまでの問い合わせ内容」を追加した。
年5日の年次有給休暇の取得義務
義務化の対象
入社6ヶ月以上経過している正社員若しくはフルタイムのパートタイマー
入社3年半以上経過している週4日のパートタイマー
入社5年半以上経過している週3日のパートタイマー
年次有給休暇管理簿
使用者は、労働者ごとに、時季、日数及び基準日を明らかにした年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
有給休暇管理管理表の運用
有給休暇管理表の見方
注意:
小野小町さんは、H30.12.07に1日の有給休暇を取得していますので、前月までが6日でしたので、消化日数を1日加算して、7日に更新しました。
有給休暇管理表の更新
毎月、給与発行を行った後、回収した有給休暇申請書をインプットとして、有給休暇管理表の「消化日数」欄を更新します。
例:
小野小町さんは、H30.12.07に1日の有給休暇を取得していますので、前月までが6日でしたので、消化日数を1日加算して、7日に更新しました。
有給休暇管理表の保管
毎月、給与発行の為に回収する「有給休暇申請書」と、当該「有給休暇申請書」によって更新された「有給休暇管理表」を一緒に、個人毎(インデックスを付けて)にファイルします。
「年5日の年次有給休暇の取得」の遵守
平成31年4月1日~平成32年3月31日の1年間に、5日以上の有給取得が必要な為、期中の平成31年9月30日の時点で、同有給休暇管理表を各事業所の管理者へ提示して、次の半年の間で、メンバーへ有給取得を促し、年5日以上の取得をシフト調整してもらう。
有給休暇管理表の実際
我が社では、給与システムを使用して有給休暇の管理をおこなっていますが、給与システムでは対応できていない処理(経過年数による付与日数の変更管理)については、有給休暇管理表(Excel)を併用して管理しています。
小野小町さんの入社を例に、「有給休暇管理表」の使い方を説明します。
有給休暇管理表の作成
小野小町さんが、平成28年5月1日に入社されました。社員番号は正社員として15029です。
「シートの追加」ボタンのクリック
「シートの追加」ボタンをクリックするとと、「付与日数」シートの直前に、新しいシートが追加されます(「new_sheet(2)」)
社員番号と氏名を入力
社員番号と氏名を入力すると、自動的にシート名が変更されます。
入社日の入力
入社日を入力すると、週労働日数を除き、各項目を自動で表示します。
週労働日数の入力
週労働日数を入力すると、有給の付与日数がわかりますので、明細を自動表示します。
有給発生日の変更
毎年の有給付与を4月に統一する為、18ヶ月目を早めて、平成29年4月1日とします。
※18ヶ月目の有給発生日には、関数が設定されていますが、関数を消して直接、日付を入力します。
以上で、有給休暇の管理ができるようになりました。
よって、この後は、有給休暇管理表に記載された有給発生日に、「付与日数」に記載された有給休暇を付与します。
有給休暇管理表の更新
平成28年11月1日(6ヶ月経過)
平成28年5月1日に入社して、6ヶ月が経過、11月1日となりましたので、6ヶ月の有給休暇の10日が付与されます。
注意:
平成28年11月1日(6ヶ月目)から平成29年4月1日(18ヶ月目)までの間で、消化された有給休暇は、「有給休暇申請書」により毎月、「消化日数」欄に加算して、有給休暇管理表を更新します。
平成29年4月1日(18ヶ月経過)
本来、入社後1年半は平成29年11月1日ですが、更新月を4月1日に統一する為、4月1日を1年半(18ヶ月)経過したものとして扱います。よって、18ヶ月目の付与日数である11日を付与します。
注意:
平成29年4月1日(18ヶ月目)から平成30年4月1日(30ヶ月目)までの間で、消化された有給休暇は、「有給休暇申請書」により毎月、「消化日数」欄に加算して、有給休暇管理表を更新します。
例:
小野小町さんは、平成29年4月1日から平成30年4月1日の間で、以下のように、12日の有給休暇を消化しました。(ここでは、消化日数の合計を表示。)
平成30年4月1日(30ヶ月経過)
6ヶ月目の付与日数=10日から、10日分の消化分を控除して、残り2日の消化分は、18ヶ月目の付与日数=11日から控除する為、有給の繰越残は9日となる。そこに30ヶ月目(2年6ヶ月)の付与日数=12日を加算して、21日が有給残となります。
平成30年4月1日~平成31年2月15日現在
小野小町さんは、平成30年4月1日から平成31年2月15日の間で、以下のように、7日の有給休暇を消化しました。よって、平成31年2月15日時点での有給残は、21日-7日=14日となります。
注意:
期首残高=21日の内、9日は前期からの繰り越しの為、平成31年4月1日の時点で2年の消滅時効となる為、9日-7日=2日が4月1日までに未消化の場合は、消えてしまいます。
有給休暇管理表の変更
パートから正社員へ
沢田麻衣子さんは、平成27年4月1日、週4日のパートタイマーとして入社されましたが、平成29年10月1日より正社員となりましたので、週5日の労働日数となりました。よって、平成30年4月1日より週5日勤務に変更となります。
①週労働日数の変更(4日から5日)
有給発生日が平成30年04月01日(42ヶ月目)となっている行の①週労働日数を直接に、4から5と変更します。(関数が設定されていますが、上書きして消します。)
②ヘッダーの週労働日数の変更
現在は、週5日勤務の為、間違わないように、ヘッダー部の週労働日数を変更しておきます。
・先頭行の週労働日数の変更
ヘッダーの週労働日数の変更を行なうと、明細の週労働日数が関数により自動で変更されますので関数を消すために、まず先頭行の週労働日数を4と手入力します。
・ヘッダーの週労働日数の変更
関数が消えましたので、ヘッダーの週労働日数を最新に書き換えます。
正社員からパートへ
看護師の石田亜由美さんは、平成27年12月1日に正社員として入社されましたが、平成29年1月から産休・育休を取得、その後職場に復帰されましたが、小さなお子さんの面倒を見る為、平成30年9月1日より正社員から週3日勤務のパートタイマーへ変更することととなりました。
①週労働日数の変更(5日から3日)
有給発生日が平成31年04月01日(42ヶ月目)となっている行の①週労働日数を直接、5から3と変更します。(関数が設定されていますが、上書きして消します。)
②ヘッダーの週労働日数の変更
現在は、週3日勤務の為、間違わないように、ヘッダー部の週労働日数を変更しておきます。
・先頭行の週労働日数の変更
ヘッダーの週労働日数の変更を行なうと、明細の週労働日数が関数により自動で変更されますので関数を消すために、まず先頭行の週労働日数を5と手入力します。
・ヘッダーの週労働日数の変更
関数が消えましたので、ヘッダーの週労働日数を最新に書き換えます。
有給休暇管理表の関数設定
勤続月数
入社日(E3)から今日(TODAY())までの月数(“M”)を求めます。
<勤続月数(G3)のセルの書式設定>
勤続年数
勤続月数(G3)を12で除して、勤続年数(H3)を求めます。
<勤続年数(H3)のセルの書式設定>
勤続月数(G3)から勤続年数(H3)✕12を控除して、月数(I3)を求めます。
<勤続年数(I3)のセルの書式設定>
有給発生日
セルの書式設定
有給発生日のセルの書式設定は、以下の通りです。
有給発生日(A列)
①先頭行(A6)
入社日(E3)から6ヶ月後を求めます。
②2行目(A7)以降
前行の有給発生日(A列)から12ヶ月後を求めます。
有給発生日(B列)
①先頭行(B6)
初期値として6ヶ月目を表示します。
②2行目(B7)以降
前行の有給発生日(B列)から12ヶ月後を求めます。
週労働日数
ヘッダーで入力した週労働日数(J5)を表示します。
付与日数
週労働日数(C6)をキーとして、「付与日数」シートのA列からH列までを検索して、一致した行の2列目の数値を求めます。
注意:
1週間の労働日数=6が設定されているのは、デイサービスの送迎として朝や夕方の2時間、週6日の雇用をしている為です。
前期繰越
先頭行(E6)
初期値として0を表示します。
2行目(E7)以降
前行の消滅後残高(J列)を表示します。
期首残高
この例では、付与日数(D6)+前期繰越(E6)を期首残高(F6)として表示します。
消化日数
初期表示の為に、0を表示していますが、この欄は入力欄です。次の有給発生日までに消化した有給休暇の取得日数の合計数を入力します。
注意:
実際の運用では、「有給休暇申請書」により毎月、「消化日数」欄に加算して、有給休暇管理表を更新します。
期末残高
この例では、期首残高(F6)+消化日数(G6)を期首残高(H6)として表示します。
時効消滅
先頭行(I6)
初期値として0を表示します。
2行目(I7)
18ヶ月目までの消化日数(G6+G7)が、6ヶ月目の付与日数(D6)よりも大きければ、0そうでなければ(≦)、付与日数(D6)-消化日数(G6+G7)を表示します。つまり、6ヶ月目の付与日数が未消化の場合は、その未消化分は、次の30ヶ月目には時効となり消滅するという事です。
3行目(I8)以降
①1年前の付与日数(D7)<前期繰越(E8)の場合
1年前の付与日数(D7)<消化日数(G8)の時 →0
1年前に付与日数(D7)≧消化日数(G8)の時→1年前の付与日数(D7)-消化日数(G8)
②1年前の付与日数(D7)≧前期繰越(E8)の場合
前期繰越(E8)<消化日数(G8)の時 →0
前期繰越(E8)≧消化日数(G8)の時→前期繰越(E8)-消化日数(G8)
消滅後残高
この例では、期末残高(H6)+時効消滅(I6)を消滅後残高(J6)として表示します。
これまでの問い合わせ内容
2019.02.21日にブログを公開して以来、大変多くの方に有給休暇管理表のexcelサンプルをダウンロード頂き、大変うれしく思っております。私の説明の至らない箇所もあり、いくつか質問を頂いておりますので紹介させて頂きます。
2021.05.02以降、すみません、excelサンプルは、「有給休暇管理表」として有償での提供とさせて頂きます。(ダウンロード販売とさせて頂きます。)
有給休暇管理表の見方
質問
2013年7月10日に入社した社員:与謝野晶子さんに関して、
・平成26年01月10日(6ヶ月目)10→平成28年01月9日 消滅
・平成27年01月10日(18ヶ月目)11→平成29年01月9日 消滅
・平成28年01月10日(30ヶ月目)12→平成30年01月9日 消滅
・平成29年01月10日(42ヶ月目)14→平成31年01月9日 消滅
・平成30年01月10日(54ヶ月目)16
・平成31年01月10日(66ヶ月目)18
有給使用日数 0
ア.上記より 現時点 令和1年8月19日に残っている有給残日数は34日でよろしいでしょうか
イ.⑧の消滅残高で有給残日数を見ているのですが④の日数で確認するのでしょうか。
回答
ア.その通りです
イ.⑧ではありません。期首であれば④、期末であれば⑥です
説明
6行目:
H25.07.10入社された与謝野さんは、6ヶ月後のH26.01.10に、10日が付与されます。
7行目:
それから1年後(入社からは1.5年後)のH27.01.10に、11日が付与されます。この時点(H27.01.10~H28.01.09)での、有給残(⑥の期末残高)は21日となります。(H27.01.10~H28.01.09の間での消化日数=0の為)
注意:
この21日は、10日+11日=21日ですが、H28.01.10となれば2年前の10日分は時効消滅として、「H28.01.10までに10日分を消化しなければ消えますよ。」という事を⑦の消滅時効に記載しています。従って、⑧の消滅後残高で有給残日数ではありません。有給残は⑥の期末残高です。7行目では、④期首残高は、H27.01.10で、⑥期末残高は、H28.01.09となり、その間の有給消化日数が⑤となります。
8行目:
それから1年後(入社からは2.5年後)のH28.01.10に、12日が付与されます。この時点(H28.01.10~H29.01.09)での、有給残(⑥の期末残高)は23日となります。(H28.01.10~H29.01.09の間での消化日数=0の為)
注意:
この23日は、11日+12日=23日ですが、H29.01.10となれば2年前の11日分は時効消滅として、「H29.01.10までに11日分を消化しなければ消えますよ。」という事を⑦の消滅時効に記載しています。従って、⑧の消滅後残高で有給残日数ではありません。有給残は⑥の期末残高です。8行目では、④期首残高は、H28.01.10で、⑥期末残高は、H29.01.09となり、その間の有給消化日数が⑤となります。
消化日数欄の関数
質問
赤字のところがなぜか数式が入っておらず、自動計算になりません。
回答
①有給発生日
有給発生日を4月1日に統一させるため、あえて、自動計算でなく、直接日付を手入力しています。以下の通り、ブログ内でも記載しています。
注意:
サンプルとしてあえて直接日付を入力しています。「シートの追加」で追加したシートでは、自動計算しております。
尚、4月1日に統一するやり方は、以下のブログを参照下さい。
②消化日数
G列の消化日数欄は、有給休暇の消化日数を手入力する欄であり、数式を設定して自動計算する欄ではありません。つまり、消化日数の12日や7日を、デフォルトで設定していた数式の上から入力した為に、数式が消えただけです。
注意:
デフォルト(初期表示)の時点では、消化日数欄がスペースだと残高計算でエラーとなる事を防ぐ為に0を表示するように数式を設定しています。
消化日数欄は、その行の有給発生日を期首として、次の行の有給発生日までの1年間に消化した有給休暇の日数を手入力する欄です。よって、この欄には数値を入力しなければなりません。が、初期状態でも数値=0と表示させる為に、関数を設定していますので、その関数の上から数値を入力して数式が消えるのは当然のことで、そのような仕様としています。
説明
7行目:
入社からは18ヶ月目(1.5年後)のH29.04.01に、11日が付与されます。④期首残高(H29.04.01)は、21日(11日+10日)ですが、H29.04.01~H30.03.31の間で有給休暇を12日消化していますので、⑥期末残高(H30.03.31)は9日(21日-12日)
となります。時効消滅はない為、9日が次の年へ繰り越されます。
8行目:
入社からは30ヶ月目(2.5年後)のH30.04.01に、12日が付与されます。④期首残高(H30.04.01)は、21日(12日+9日)ですが、H30.04.01~H31.03.31の間で有給休暇を7日消化していますので、⑥期末残高(H31.03.31)は14日(21日-7日)となります。この14日は、H31.04.01となれば2年前の2日分(繰越の9日-消化の7日)は⑦時効消滅となり、消化しなければ消えてしまいます。
有給休暇管理表のダウンロード販売
有給休暇管理表のExcelシートをBASEのGUNGII-BASEよりダウンロード販売することとなりました。有給休暇管理表V3.0を収録しています。
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