毎年、3月下旬に協会けんぽより、生活習慣病予防健診の案内が送られてきます。これを活用して年1回の会社の定期健康診断に充てるのですが、実際に健診を受けて頂くまでには社員と病院の間で、日程調整や健診内容の確認そして、協会けんぽへの報告など、手続きに結構な時間を取られます。
ところが、この手続きについては、一般的には人事・総務又は労務が担当するかと思いますが、小さな会社では、そのような部署もなく誰がその手続きを行い、誰が社員に案内するのかが決められていないことが多く、その為、どんな手続きが必要で、どこに依頼すれば良いのか?がわからず戸惑った事を覚えています。そこで、今回は、実際に手続きを行いながら、手順等を説明しますので、参考になればと思います。
健康診断とは
労働安全衛生法第66条と労働安全衛生法規則第43条、44条により、事業所は゛従業員を雇い入れる時゛と、その後゛1年以内ごとに1回、定期的に゛一般の健康診断を実施しなければならない事になっています。
健康診断の種類
企業が実施する健康診断には、「一般健康診断」と「特殊健康診断」があります。一般健康診断は、さらに「雇入れ時健康診断(労働安全衛生規則第43条)と、「年1回の定期健康診断(労働安全衛生規則第44条)」とがあります。
注意:今回、「特殊健康診断」についての説明は省略します。
雇入れ時健康診断
労働安全衛生規則第43条では、「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。」とし、雇入れ時健康診断を行うことが義務づけられています。
定期健康診断
労働安全衛生法の中で、事業主が社員に対して通常1年に1回の受診が義務付けられているものが、「年1回の定期健康診断」(労働安全衛生規則第44条)です。雇入れ時の健康診断と同じく、「常時使用する労働者」が対象となります。
(注意)
「常時使用する労働者」の条件は「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上」である者です。よって、必ずしも正社員に限らず、一定の条件を満たしたパートやアルバイトでも該当する場合があります。これらの条件を満たさなかったとしても、週の労働時間が正社員の2分の1以上のときは努力義務となります。
健康診断の検査項目
雇入れ時の健康診断と、定期健康診断の健診項目はほぼ同じで、次の通りです。
※雇入れ時の健康診断では検査項目の省略はできませんが、定期健康診断の検査項目は、基準に基づき省略が可能となっています。

生活習慣病予防健診
生活習慣病予防健診は、「協会けんぽ」が病気を予防するための保険事業の一環として対象者を年齢によって限定し(35歳以上)、費用を補助することで、充実した健診を実施するものです。従って、事業主の義務である定期健康診断とは別物なので、受けたい人が受けるということになります。
但し、生活習慣病予防健診のコースの中で「一般健診」を受診した人については、定期健康診断に代用することが可能です。(「一般健診」が定期健康診断の検査項目を含んでいる為)
定期健康診断の実施
「生活習慣病予防健診のご案内」の受け取り
毎年、3月の下旬に協会けんぽより、緑の封筒で、「生活習慣病予防健診のご案内」が郵送されてきます。


受診コースの選択
生活習慣病予防健診の一般健診
定期健康診断に代用することができますので、「一般健診」を受診して頂きます。
労働安全衛生法に基づく健康診断
①単独検診
生活習慣病予防健診の中で、「がん検診」や「子宮頸がん検診」等を単独で受けた場合は、定期健康診断の検査項目とは異なる為、別途で定期健康診断を受ける必要がありますので、「労働安全衛生法に基づく健康診断」を受けて頂きます。
②35歳未満
生活習慣病予防健診の対象者は35歳以上の為、35歳未満の社員については、別途、定期健康診断を受ける必要がありますので、こちらを受けて頂きます。
受診機関への予約状況の確認
健康診断の予約をしても、日程の調整が必ず発生しますので、確実な時期を確認するために予約申し込みの前に、状況を確認します。
「約20名で、健康診断を申込みたいのですが、20名の希望日をお持ちして予約となりますが、できる限り希望日で受診できるためには、何時ぐらい以降なら゛という時期があれば教えて下さい。」
今回は、「5月20日以降であれば」という回答を頂きました。
注意:
協会けんぽから届く「生活習慣病予防健診のご案内」の中に、「生活習慣病予防健診実施機関一覧表」が同封されていますので、この中から受診機関を決めます。
社員へ希望日の確認
協会けんぽの申込書に記載されている社員は「協会けんぽ診断」として、記載されていない社員は「安衛法健康診断」として、以下のような「申込表」を配布して希望日を記入して頂きます。この際に、希望日は5月20日以降で記入頂く様にお願いします。
※第1希望日と第2希望日、そして胃カメラorバリウムの別を記入して頂きます。
留意:
定期健康診断の受診対象者として、正社員及び週の労働時間が正社員の4分の3以上の者が全て、申込書に記載されているか?を必ず、チェックします。

例:
大野佳枝さんは、協会けんぽ診断では子宮頸がん(単独)の健診のみですので、これだけでは、定期健康診断になりませんので、安衛法健康診断を受けて頂きます。
希望日の回収
今回は、3月22日に社員に案内して、4月2日に回収しました。

受診機関への申込
4月3日、該当の受診機関へ申込みを行い、4月5日に回答を頂きました。すべて、第1希望日でOKとの回答です。

申込書の郵送
受診機関と「健診を受ける日」が決まりましたので協会けんぽの申込書へ転記して郵送します。
注意:受診機関の方から協会けんぽへ提出して頂けるようですが、自分で郵送します。
※2021.06現在、協会けんぽへの郵送は必要なくなりました。

社員への案内
社員へ受診機関と日程を知らせます。
